ドラマで話題の生活保護について元ケースワーカーが解説!

ドラマで話題の生活保護について元ケースワーカーが解説!

ドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(フジ系火曜9時)をご存知ですか?

生活保護を題材としたドラマで、吉岡里帆演じる新人ケースワーカーが受給者の様々な問題に取り組んでいくという内容です。

 

私は非常勤ですが、生活保護のケースワーカーをしていた経験があり、色んな意味で刺さるドラマです。

私もドラマの主人公と同じように、様々な問題を抱える受給者に振り回されまくりでしたね。

懐かしいような、胃がキュッと縮むような思いで見ていました。

 

さて、今回はドラマに触発されて、生活保護はどういうものか、実際どんな感じかなどを書いてみたいと思います。

生活保護とセーフティネット

生活保護とは、何らかの理由により貧困に陥り、生活が行き詰ってしまった人の「最後のセーフティネット」となる制度です。

セーフティネットとは、高いところから落ちて死んでしまう前に、網を広げて命を救うというイメージの言葉(今は大体マットとか使いそうですが)。

 

「最後の」とついているように生活保護以外にも、セーフティネットとなるものは沢山あります。

例えば高齢で仕事ができなくなった人向けに支給される年金、仕事を辞めて収入が無くなった人向けに支給される失業手当、病気で高額なお金がかかる時に助けてくれる健康保険などです。

国や自治体の制度だけでなく、例えば民間の保険サービスもセーフティネットに含まれます。

生活保護はこれらの様々な制度やサービスをもってしても救うことができない人に向けた、最後の希望なのです。

生活保護を受けられるのはどんな人?

上でも書いた通り、生活保護は他のどんなサービスを利用しても貧困から抜け出せない人のための制度です。

ではどのくらいの生活水準・収入であれば生活保護が受けられるのでしょうか?

その基準となるのが、ドラマタイトルにもある「健康で文化的な最低限度の生活」です。

これは憲法25条にも記載されており、健康で文化的な最低限度の生活が送れていないような世帯は、生活保護を受けることができます。

 

じゃあ「健康で文化的な最低限度の生活って何よ?」って話ですが、これが議論の的となる部分でもあります。

例えば食事にも困るレベルの貧乏なら誰の目にも確実に健康でない生活と言えますよね。

しかし、分かりにくいのが「文化的な生活とは?」という部分です。

これは日本人の大半が持っているもの(行っていること)ができないレベルと解釈されます。

 

例えば今ならテレビは大半の家にありますよね。

テレビは生死に直結するようなものではありませんが、文化的な生活を送るためには必要なものと判断されるのですね。

ただ、テレビを持っていない=生活保護対象となる訳ではなく、あくまで収入や預貯金を見て総合的な判断となります。

生活保護の原則

生活保護には4つの原則があります。

  • 申請保護の原則
  • 基準及び程度の原則
  • 必要即応の原則
  • 世帯単位の原則

これだけ読んで「はい、難しい!無理~」となる人も多いと思いますが、分かりやすく説明していきますね。

申請保護の原則

これは「いくら貧乏でも申請しないと生活保護はあげないよ」という原則です。

つまり貧乏でも年金のように「生活保護受給対象のお知らせ」みたいな通知は来ません。

自分で市役所に相談に行く必要があるのです。

具体的な申請方法は下で説明します。

基準及び程度の原則

生活保護費の金額は厚生労働省が定めているのですが、その時の社会情勢により金額が改定されています。

この厚生労働省が定める生活保護費よりも手持ち金・貯金が少ない場合に保護決定となるのですが、支給される金額は全員同じではありません。

 

例えば仕事をして多少収入がある人は、その収入分を差し引いた分が支給されます。

また、他の制度でお金をもらっていたり、親族などに多少援助してもらう場合も同様です。

これは生活保護があくまで「最低限度の生活」を保証するもので、生活を楽にさせるための制度ではないからです。

必要即応の原則

これは保護費を「必要なタイミングに、有効な方法で」支給する原則です。

例えば、病気で命が危険な人には即保護決定することがありますし、逆に貯金がまだ残っているような人には一旦保護を保留にすることもあります。

臨機応変に対応することが求められており、この辺りは普通のお役所仕事とは一味違うところです。

世帯単位の原則

生活保護は個人個人で受けるものではなく、世帯単位で受けることが原則です。

例えば、父・母・息子・娘といった4人家族で同居している場合、母親の稼ぎが少なくても父親の収入が生活保護水準以上なら生活保護は受けられません。

世帯全体の収入で生活保護が適切などうかが判断されるのです。

ただこれには例外もあり、世帯単位で判断するのが適切でないと判断された場合は、個人だけが保護を受けられる世帯分離という形をとることもあります(当然ですが何でもかんでも世帯分離にはなりません)。

生活保護のデメリット

生活保護の制度を見て「働かなくてもお金もらえるなんてラッキー!」と思う人もいるかもしれません。

しかし、生活保護にはそれなりのデメリットもあります。

プライベートがワーカーに筒抜け

生活保護を申請する時、市役所のケースワーカーに貧困に陥ったそれまでの経緯や今の状況を事細かに説明する必要があります。

かなりプライベートなところに踏み込まれるので、言いたくない人には苦痛に感じるかもしれません。

また、貯金通帳を調べられたり、家族へも手紙(扶養照会)が届いてしまいます。

生活をあれこれ指導される

生活保護は貧困を救う以外に「受給者の自立を促す」という目的があります。

自立というのはつまり、生活保護が無くても自分の収入で生活できるようになること。

そのため、ケースワーカーは働ける人には、口酸っぱく就職活動をするように言います。

他にもお金の使い方の指導や生活の指導など色々言われますし、報告しないと長期間の旅行も行けません。

これも人によってはイライラの要因になると思います。

手放さなければならないものがある

生活保護を受ける前に、資産となるものは売って生活費にしなければなりません。

例えば、多くの地域では車の所持は認められていません。

一軒家の場合も、資産価値がある場合は手放さなくてはなりません。

売れるものは売ってお金にしろ、と言われます。

これらの物は、売って生活保護を受給し始めると、再度買い直しするのは非常に難しいのが現実です。

一度受給すると抜け出しにくい

一度生活保護を受給すると、そこから抜け出すのは非常に難しいです。

受給者の自立を促すのが生活保護と言っておきながら矛盾していますが、働かなくても生活できてしまうと思うとなかなか人はそこから抜け出せないものなのですね。

働いてもその分を生活保護から差し引かれてしまうので(一部控除される分もありますが)、働くのが損な気分にもなるようです。

生活保護から自立を目指すには本当に強い意志が必要となります。

 

このように生活保護にはデメリットも数多くあります。

どうしようもない場合には申請するべきですが、安直に生活保護に頼るのは考えものですね。

生活保護を申請する流れ

生活保護を受けるためには、お住まいの地域の市役所の生活保護課(町村の場合は福祉事務所)に相談に行きます。

そこで今の生活状況や家族構成、金銭状況などを事細かに聞き取りされます。

この時、もしすぐに生活保護が必要だと判断されたら、そのまま生活保護申請書を記入します。

ですから、相談に行く時には通帳類、印鑑・家族の住所が分かるものは持って行った方がいいかもしれません。

 

申請書を提出したら、本当にこの人に生活保護を支給しても良いかどうかの調査を行います。

調査されるのは主に、銀行などの預貯金調査、家族が援助してもらえるかどうかという扶養照会、そして申請者の自宅にケースワーカーが直接訪ねる訪問調査です(他にも必要と思われる調査があればそれも行います)。

預貯金調査や扶養照会は役所の方で行い、特に何もする必要はありませんが、訪問調査の時はちゃんと家にいて調査を受けなければなりません。

訪問調査では最初の面談と同じような聞き取り調査が行われる他、家の様子を見てどういう生活をしているかなどが調査されます。

特に身構える必要はありませんので、ありのままの生活を見せましょう。

 

調査の結果、生活保護の対象となる人だと判断されれば、支給決定通知が届きます。

決定通知にはどのような扶助(生活費となる生活扶助、家賃となる住宅扶助など)がいくら支払われるかが書かれています。

決定通知と共に、「〇月○日に保護費を取りに来てください」という案内も届くので、その日に生活保護を取りに行きましょう。

印鑑をお忘れなく。

 

また、生活保護が決定すると、それ以降はケースワーカーの指導に従う必要があります。

就職活動を行ってくださいと言われれば、ハローワークでの就職活動報告をしたりしなくてはなりませんし、ケースワーカーは不定期で家庭訪問も行います。

あまりに指示に従わない、連絡が取れない状況だと保護停止になることもあるので注意しましょう。

 

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ドラマと現実の違い

ここまで生活保護という制度についての説明をしてきました。

沢山書きましたが、なるべくお世話になりたくない制度ではありますね。

 

さて、私は実際に生活保護のケースワーカーを行っていたのですが、ドラマの中と現実ではやっぱり多少違いはあります。

まず、ドラマでは今のところ保護受給者が善人に描かれていますが、現実では小ズルい人もいっぱいいるということ。

収入があっても故意に隠そうとしたり、保護費をもらってすぐにトンズラしたり、女性なら男を作って別に援助してもらっていたりと、色々な方法でケースワーカーを騙そうとする人もいます。

もちろん、そうじゃなく頑張って自立に向けて動いている人もいっぱいますけどね。

今後の話でそういうタイプの受給者も現れてくれるとよりリアルなドラマになるかと思います。

 

あと、主人公のような熱いタイプの人は、市役所職員には少ないイメージ。

私の職場だけかもしれませんが、どちらというと飄々(ひょうひょう)としている人が多かったです。

相手に入れ込みすぎるとしんどいので、そういう人の方が向いていると思います。

私はむしろドラマの主人公のような入り込みすぎるタイプだったので、結構苦労しました。

 

そして最も大きな違いは、役所にあんな美男美女がそろってる訳ないだろー!ということ。

職場にあれだけ美女がそろっていれば、辛いことがあっても全然へっちゃらそうです。

現実は…ノーコメントとしておきましょう。